サロメを読んだ感想【原田マハ】
昨年購入して、資格試験で読む余裕がなく積読本となっていた「サロメ」を読みました。
著者は「本日はお日柄もよく」や、「楽園のカンヴァス」でも有名な原田マハさんですね。
本書の「サロメ」は、新約聖書の挿話をもとにしたオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を題材としています。
その退廃的、耽美的な内容が人気で、現在も舞台で上映されている有名な作品ですね。
少し前には多部未華子さんが主演で演じていたみたいです。
おそろしいのだ、彼の絵は
おそろしいほどに、蠱惑的なのだ。<サロメ (文春文庫) [ 原田 マハ ]本文より>
彼の絵とは、本書の主人公であるオーブリービアズリーの描くペン画のことです。
白黒のペン画でありながら、悪魔的な彼の絵は見る人を魅了していきます。
その若く才能豊かなオーブリーの絵を巡る、4ツ巴の物語でした。
ネタバレを含みますので、読む予定のある方はご注意ください。
あらすじ
メイビルビアズリー・・・オーブリーの姉であり、弟を献身的に支援、舞台女優として戯曲サロメの主演を渇望
オスカーワイルド・・・戯曲サロメを書いた作家、男色家でありその魅力でオーブリーとダグラスを虜にする
アルフレッドダグラス・・・サロメの英訳をした文筆家、オスカーワイルドに魅了され、オーブリーに嫉妬する
1890年頃のイギリスが舞台となっています。
本書は画家オーブリービアズリーの姉メイブリー視点で描かれています。
結核を患う弟オーブリービアズリーを献身的に支える姉のメイブリービアズリー。
弟の才能に世間が騒ぎ始める中、自身は舞台女優としてなかなか芽がでない。
そして人気作家であるオスカーワイルドと出会うことで、
オーブリービアズリーはワイルドに魅了されます。
男色家であるワイルドと、オーブリーが深い仲になっていくことで、感じる焦燥と嫉妬心。
当時男色は有罪とされていたこと、その過激性からタブー視されていたサロメを戯曲化することから、
ワイルドは危険だとメイブリーはオーブリーに忠告しますが、オーブリーは聞き入れるどころか激怒します。
そんな中、ワイルドと関係を持つ美青年のダグラスと出会い、
屈折した方法でワイルドとオーブリーを引き離そうとしますが...
感想
芸術には疎く、本作でサロメを知ることになりましたが、
そんなことは全く関係なく、とても面白かったです。
4つ巴の憎悪が入り乱れるドロドロした話に引き込まれました。
原田マハさんはの本は芸術に関するものが多く、
読むたびに新しいことが学べますし、読みやすいので大好きです。
本の中には、
「<サロメ>の真の作者は、ビアズリーだ」
「ビアズリーなくしてサロメはここまで有名にならなかった」
と、記載がありました。
挿画したイラストレーターがここまで称賛されるって、すごいですよね。
本書は史実に基づいたフィクションですが、
実話じゃないかと思ってしまうようなストーリーでした。
サロメの舞台もいつか見てみたいと思います。
サロメについて
以下、本文から引用します。
牢獄につながれた美貌の預言者ヨカナーンをひと目見て、サロメは恋に落ちる。
しかしヨカナーンはサロメを拒絶し、彼女に不吉な言葉を吐きかける。
恋する相手に受け入れられないと知るや、サロメは自分に色目を使う義理の父、ヘロデ王の前でエロティックなダンス
「七つのヴェールの踊り」を披露し、「なんでも褒美をとらせる」と王に言わせる。
褒美としてサロメが望んだのは、恋する男、ヨカナーンの首。
ヘロデ王は躊躇するが、約束通りにヨカナーンの首を刎ねさせ、銀の皿に載せてサロメの前に持ってこさせる。
サロメはヨカナーンの首にくちづけし、「ああ!私はとうとうお前の口にくちづけした」と陶然となる。
これを見たヘロデ王は、「あの女を殺せ」と命じ、兵士の楯がサロメを押しつぶしたところで、物語は終わる。<サロメ (文春文庫) [ 原田 マハ ]本文より>
本書の主題となった、オスカーワイルド著「サロメ」もこれを機に読んでみようと思います。
おわり。