本屋大賞ノミネート!逆ソクラテスを読んでみた

2021年本屋大賞にノミネートされた伊坂幸太郎「逆ソクラテス」を読みました。

逆境にもめげず簡単ではない現実に立ち向かい非日常的な出来事に巻き込まれながらもアンハッピーな展開を乗り越え僕たちは逆転する!無上の短編5編(書き下ろし3編)を収録。

デビュー20周年記念作品で、2020年4月24日に発売されています。
まだ文庫本は出ていなかったので、メルカリで単行本を購入しました。

2021年の本屋大賞にノミネートされているだけあって、ほぼ新品みたいな値段で売られています。笑



本作には5つの短編があり、全ての物語で小学校が舞台。
小学生の話ですが、子ども向けというわけでもなく、大人が回想して「あの時はこうだったな。」という風に話が展開していきます。


ほとんどの話に転校生が登場。
小学校のときは、転校生が来るとクラス中がざわざわしていたのを思い出しました。笑

帯にも書いてある、「敵は、先入観。」ですが、
5つの短編とも先入観がテーマになっているのかな、と思います。


ネタバレを含むので、これから読まれる方は読み飛ばしちゃってください。

話ごとのつながりについて

伊坂幸太郎の短編小説では、一人の登場人物が複数話に登場することがよくありますが、
本作でも少しだけありました。


「スロウではない」の担任だった磯憲先生が、
「アンスポーツマンライク」のミニバスのコーチとして再登場したり、

「アンスポーツマンライク」で犯罪者だった人物が、
「逆ワシントン」で家電量販店員として再登場します。



ソクラテス

2012年に書かれた作品。

冒頭、男がテレビで野球中継をみているところから始まります。
センターを守る選手が好プレーを魅せた後、

両手で顔をこする。ばしゃばしゃと洗う仕草で、その後で指を二つ突き出した。
持っていたリモコンの電源ボタンを押す。大型テレビは仄かに息を洩らすような音を立て、画面が暗くなる。

という描写ですが、

ここでテレビを観ていたのは主人公の担任だった、久留米先生なのかな。と思います。


久留米先生は、後にこのセンターを守る野球選手となった生徒(草壁君)を見下していたので、
この「顔を洗って自分の目で見てみろ!」というジェスチャーが応えたのでしょうか。

ため息をつくような、暗い感情が伝わってきます。


この話に出てくる安斎君という転校生が、
久留米先生やガキ大将から「ダメ」な烙印を押されている草壁君の印象を変えようと作戦を練ります。

草壁君のテストの点数を良くしたり、
野球選手に草壁君のスイングをほめてもらったり。


この安斎君は、すぐに転校してしまい、
20歳になるころにはチンピラになっていたとか、、、

後の話にも安斎君が出てくるかな?
と期待しましたが、それっぽい人はでてきませんでした。




スロウではない

2015年に書かれた話

担任の磯憲(いそけん)はこの後の話にも出てきます。

転校生の高城さんが、女子のボスから目を付けられてしまいますが、
実は○○だった。という話。


話の最後に、社会人になった主人公が、磯憲から同級生同士の結婚を知らされます。

同級生の3人が大人になるまで親交を持ち続け、自分がそこに入れなかったことの寂しさを感じる。


これを読みながら、あの頃にはもう戻れないんだな。と、自分も寂しさを感じました。笑


オプティマ

書き下ろしの話。


オプティマスプライムトランスフォーマー)を引用して、「私に、良い考えがある。」というセリフが何度か出てきました。



普段は頼りない久保先生がある出来事をきっかけに名言を連発し始めます。

相手によって態度を変えることほど、格好悪いことはない。
暴力は相手が自分より小さくて、弱い時にしか通用しない。大人になると通用しなくなる。

人は、他の人との関係で生きている。良い評判が自分を助けてくれる。


今回の短編集で、この久保先生が一番伊坂節をかましていたように感じます。




本屋大賞ノミネート作品だけあって、面白かったです。

一話完結ですが、一貫性があり読後感もスッキリ。
おすすめの一冊です。