無利子融資で得する人、損する人
コロナウイルスで業績が悪化している中小企業を支援するために、
無利子融資制度の上限増額が決定しました。
無利子融資はもともと12月末までの制度だったのですが、
年末にかけてコロナウイルスの感染が拡大したため、3月末まで制度の延長が決まっていました。
銀行員はこの制度のおかげで融資成績を大きく伸ばすことができるので、
制度延長・上限増額のニュースは銀行員界隈でかなり話題になりました。
今回は無利子融資制度の概要と、今後の企業業績への影響についての私の考えをまとめていきたいと思います。
無利子融資で得する人
無利子融資により、企業は銀行から融資を受けやすくなり、
銀行は融資残高増加により利息収入が増えます。
企業は利息負担無し
最大のメリットは、3年間利息負担が無いことです。
利息負担が無いため、「資金繰りに困ってはいないけど、念のため借りておこう」という企業が多くあります。
使わないのであれば、3年間経った後に全部返済してしまえば一切利息はかかりません。
借りて預金に預けておけば、少ないながら利息は入りますから、超お得です。
更に、金銭消費貸借契約証書(いわゆる借用証書)に貼る印紙税も非課税になります。
まさに大盤振る舞いです。
企業がこの無利子融資制度を利用する為には、銀行の融資審査を通さないといけません。
売上が下がっているのに、銀行は融資してくれるのか?という疑問が生まれると思います。
銀行は儲かる
無利子融資制度に関していえば、銀行の審査はほぼ通ります。
金額の多寡はありますが、この半年超の期間でゼロ回答は一件もありませんでした。
銀行の審査が通りやすい理由は、
信用保証協会が全額融資金額を保証してくれるからです。
信用保証協会は、いわゆる企業の保証人のようなもので、
企業が債務を返済できなくなった時に、企業に代わって銀行へ債務を返済してくれる機関です。
お金を貸して、企業か信用保証協会のどちらかからお金が返ってくるのであれば、
銀行は利息は必ず入ってきて、貸し倒れの心配もないので、大儲けです。
銀行としてはどんどん無利子融資を使ってもらう方が良い。ということになります。
信用保証協会も、タダでは企業の保証はしてくれません。
債務保証する代わりに、通常は企業から保証料を徴収します。
無利子融資は、この保証料も国が負担してくれます。
保証料は金額によっては100万円以上かかりますから、
税金がかなり使われていることが予想されます…
税金負担は増える
企業⇒銀行へ利息を払う
国⇒企業へ利息分をキャッシュバック
国⇒信用保証協会の保証料を負担
この費用はどこから捻出するんだろう。と不安になります。
コロナ対策で企業への支援が増えますが、
財源は国の借金ですから、みんなで税金をたくさん払って国の借金を返さなければいけません。
税金収入を増やすには、税率を上げるか経済発展して所得を上げるかしかないですから…
元本据置の落とし穴
旅館業や、旅行代理店、飲食店等、
コロナウイルスによる影響を受けている企業の多くは無利子融資を受け、
元本返済の据え置きをしています。
仮に4000万円を借りて。
3年間元本据え置き、7年間で返済すると、
年間570万円も返済しなければいけません。
多くの企業は、資金繰りが苦しくなって無利子融資を利用していますので、
元本返済の据え置きをしています。
返済が始まるまでに、事業を立て直して利益が出るような状態にしなければいけません。
個人的には、この無利子融資制度が単なる延命措置にならないように、
元本据え置きしている間に、コロナ禍でも正常な事業運営ができるビジネスモデルを構築することが重要だと考えています。
以前ご紹介したような補助金を活用して、コロナ禍の新しいビジネスモデル創出を支援してきたいものです。